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Cookieレス対策のBtoB実践ガイド【2026年版】|計測不能を突破するMA設定とデータ戦略

KPIは営業と共有すべき!セールスとマーケの連携をスムーズに進める方法。 

 

 サードパーティCookieの利用制限が現実のものとなった今、BtoBマーケターが直面しているのは「計測できていたはずのものが、計測できなくなる」という問題です。広告の効果測定、リードのトラッキング、ナーチャリングのスコアリング――これらの多くがCookieへの依存を前提として設計されてきました。しかし手をこまねいている余裕はありません。本記事では、BtoB特有の文脈を踏まえた具体的な対策と、現場で実際に機能するアプローチを整理します。 

こんな課題の解決のヒントに!

  • 広告のコンバージョン計測が不安定になり、経営層への費用対効果の説明が難しくなっている
  • Cookieに依存したリターゲティング施策の精度が落ち、ナーチャリング設計を一から見直す必要に迫られている
  • MAツールの設定が古いままで、Cookieレス環境に対応できているか確認できていない

Cookieレス時代がBtoBマーケティングに与える影響

サードパーティCookie廃止の現状と法規制の動向

Googleはサードパーティ Cookieの廃止計画を複数回延期してきましたが、2025年後半からChrome上での段階的な制限が本格化しています。一方で、Apple SafariとFirefoxはすでに数年前からサードパーティCookieをデフォルトでブロックしており、実態としてはブラウザシェアの半数以上でサードパーティCookieがすでに機能しない状態です。

 法規制面でも、EU一般データ保護規則(GDPR)の厳格な運用や、日本の個人情報保護法改正の影響を受け、Cookie同意バナーの取得・管理が義務化されるケースが増えています。BtoBビジネスにおいても、取引先企業の従業員個人の行動データを追跡するという行為そのものが、コンプライアンスリスクとして認識され始めています。 

現状整理
Cookieレスは「将来の話」ではありません。Safari・Firefoxを合算すると、すでに主要ブラウザの約35〜40%でサードパーティCookieは動作していません。自社サイトのブラウザ別セッション比率をGA4で確認し、実際の影響範囲を把握するところから始めてください。

従来のマーケティング手法が通用しなくなる具体的なポイント

 BtoBマーケティングで特に影響が大きいのは以下の3領域です。 

① 広告のアトリビューション:ディスプレイ広告やリターゲティング広告の効果測定が不正確になります。「この広告を見た人が、30日後にフォームから問い合わせた」という経路がトラッキングできなくなるため、広告ROIの根拠が崩れます。

② リードのクロスデバイス追跡:BtoBの意思決定者は、スマートフォンで情報収集し、PCで資料請求するといった行動をとります。Cookieベースのトラッキングでは、これらを同一人物として紐づけることが困難になります。

③ MAツールのスコアリング精度:匿名訪問者の行動データに基づくスコアリングは、Cookieが機能しなければ正確に機能しません。既存のリードスコアが過小評価されるリスクがあります。

計測不能時代を乗り越える!BtoB向けCookieレス対策3つの柱

1:ファーストパーティデータ戦略の強化と統合

ファーストパーティデータとは、自社が直接取得するデータです。フォーム入力、メール開封・クリック、イベント参加履歴、サポートチケット、CRMの商談記録――これらはすべてCookieに依存しない、自社管理のデータです。

重要なのは、これらのデータを「バラバラに存在している」状態から、CRMやCDPを介して統合することです。HubSpotを使っている場合であれば、フォーム送信データ・メールエンゲージメント・営業ログを一元管理する設計が基本になります。

BtoBでは購買サイクルが長期にわたるため、数ヶ月にまたがる複数のタッチポイントを統合してリードの状態を把握できる仕組みが、Cookieレス環境では特に価値を持ちます。

実務ポイント
ファーストパーティデータの統合は、MA・CRMの設定整備から始まります。まずは自社のフォーム送信データがCRMのコンタクトレコードに正しく紐づいているか、メールエンゲージメントがスコアリングに反映されているかを確認してください。意外と設定が途中で止まっているケースがあります。

2:ゼロパーティデータ(顧客同意データ)の戦略的獲得術

ゼロパーティデータとは、ユーザーが自発的に提供する情報です。アンケート、プリファレンスセンター、コンテンツ選択行動などがこれにあたります。Cookieによる推測ではなく、顧客本人が申告した情報であるため、精度と信頼性が高く、かつ法的リスクが低い点が強みです。

BtoBの文脈では、資料ダウンロード時の「現在の課題を教えてください(複数選択)」「検討フェーズを教えてください」といった設問が、ゼロパーティデータの取得機会として機能します。これらの回答をMAのカスタムプロパティに格納し、セグメンテーションやシナリオ分岐に活用します。

重要なのは、情報提供に対する「対価」を明示することです。より関連性の高いコンテンツを届ける、検討に役立つ情報を優先的に送る、といったベネフィットを示すことで、回答率を高められます。 

3:プライバシー保護型計測技術の導入と活用

Cookieに代わる計測技術として、以下が実用段階に入っています。

サーバーサイドタギング(SST):計測タグをブラウザではなくサーバー側で処理する手法です。ブラウザの制限を回避しながら、自社ドメインのファーストパーティデータとして計測できます。Google Tag Managerのサーバーサイドコンテナが代表的な実装方法です。

コンバージョンAPI(CAPI):Meta・LinkedInなどの広告プラットフォームが提供するサーバーサイドのコンバージョン送信機能です。フォーム送信などのイベントを、ブラウザのCookieを介さずに広告プラットフォームへ直接送信します。BtoBでLinkedIn広告を活用している場合、LinkedIn CAPIの設定は優先度が高い施策です。

Googleシグナルと同意モードv2:GA4においては、同意モードv2の設定により、Cookie非同意ユーザーのデータをモデリングで補完できます。完全なデータではありませんが、傾向把握の精度を維持するために設定しておくべき項目です。

【実践】既存MAツール(HubSpot等)で今日からできるCookieレス対応

MAツールにおけるデータ収集・管理設定の見直し

HubSpotを例にとると、まず確認すべきは以下の設定項目です。

① Cookieバナーの設定:HubSpotには標準でCookie同意バナー機能があります。バナー未設定のまま運用しているケースが散見されます。GDPRまたは個人情報保護法に準拠した形でバナーを設定し、同意ステータスをコンタクトのプロパティとして記録してください。

② フォームのプログレッシブプロファイリング:毎回同じ項目を聞くフォームは離脱率が高まります。HubSpotのプログレッシブフィールド機能を使い、既知の情報は再入力させず、未収集の情報を段階的に取得する設計に変更します。これにより、ゼロパーティデータの蓄積効率が上がります。

③ トラッキングコードの設置確認:HubSpotのトラッキングコードがすべてのページに設置されているか確認します。特にLPやサンクスページが別ドメインや別CMSで運用されている場合、計測が途切れているケースがあります。

Cookieレス下での効果的なナーチャリングシナリオ再設計

リターゲティングに依存しないナーチャリングを設計する場合、軸となるのは「メールチャネルの再評価」です。メールはファーストパーティデータを介したコミュニケーションであり、開封・クリック行動はCookieなしでトラッキングできます。

具体的なシナリオ設計の手順として、まずリードを「コンテンツ接触の深さ」と「フォームへの回答情報(課題・検討フェーズ)」で分類します。この2軸のマトリクスでセグメントを定義し、各セグメントに対して異なるメールシナリオを走らせます。

次に、各メールのCTAをランディングページに誘導するのではなく、「返信してください」「この選択肢の中でどれが近いですか」といった対話型に変更することで、ゼロパーティデータの取得とエンゲージメント計測を同時に行います。

経営層を納得させる!Cookieレス時代のレポーティング戦略

Cookieレス化によって最も困るのは「以前と同じKPIで報告できなくなる」という状況です。特にアトリビューション系のレポートは、数値の信頼性が低下します。ここで重要なのは、正直に変化を開示しながら、代替指標を提示することです。

具体的には、以下のフレームで経営層への説明を構成することを推奨します。

①「測れなくなった部分」を明示する:「Cookieの制限により、広告経由のコンバージョンの一部がGA4上で計測不能になっています。現在、同意モードのモデリングで補完していますが、実数との乖離が生じる可能性があります」という形で透明性を持って説明します。

②「測れる指標」をKPIの中心に置く:フォーム送信数、メールエンゲージメント率、SQL数、商談化率――これらはCookieに依存しない計測が可能です。BtoBにとって本来重要なのはパイプラインへの貢献であり、「Cookieレスで計測できなくなった部分」はそもそも事業成果との因果関係が弱い指標であることが多いです。

③「モデリング補完」の概念を共有する:GA4が採用しているモデリング補完の考え方を、経営層に簡単に説明しておくことが有効です。「すべてのデータが取れているわけではないが、統計的な推定で補完している」という前提共有をしておくと、レポートの数値変動への過剰反応を防げます。

Cookieレス時代に成功するBtoBマーケターの新たなスキルセット

データ分析力と戦略的思考の重要性

Cookieレス環境では、「自動的に集まるデータ」の量が減ります。その分、取得できたデータをどう解釈し、意思決定に活かすかという分析力の比重が上がります。具体的には、モデリングデータと実計測データの差分を読む力、コホート分析でナーチャリング施策の効果を検証する力が必要になります。

また、チャネル横断でデータを統合する「データ設計力」も求められます。CRM・MA・広告プラットフォーム・SSTをつなぐデータフローを設計できるマーケターは、Cookieレス環境でも安定した計測基盤を維持できます。

顧客との信頼関係構築が最重要資産に

Cookieによる追跡が制限される中で、顧客が自発的に情報を提供してくれる関係性、つまり信頼ベースのエンゲージメントが、マーケティング資産として相対的に価値を高めています。

BtoBにおいて、これはコンテンツマーケティングやイベント・ウェビナーへの参加促進として具体化されます。「このベンダーのコンテンツは役に立つ」「このセミナーには毎回参加する価値がある」という認識を積み上げることが、Cookieレス下でもデータを集め続けられる組織の土台です。

まとめ:Cookieレスを機会に変えるBtoBマーケティングの未来

Cookieレス化は、確かにマーケティング業務の多くの部分を見直す必要を迫ります。しかし同時に、「Cookieに依存していたために曖昧なままにしていた課題」を整理するきっかけにもなります。

ファーストパーティデータの統合、ゼロパーティデータの獲得設計、サーバーサイドの計測基盤整備、そしてパイプライン起点のKPI再定義。これらは、Cookieレスに関係なく「BtoBマーケティングの成熟度を上げる」ための取り組みでもあります。

「計測できなくなった」という状況を嘆くより、「何が本当に計測すべき指標なのか」を問い直す機会として、今のタイミングを活かしてください。

この記事を書いた人[ABOUT

IT・デジタルマーケティング領域で20年以上の実務経験。現在は、デジタルマーケティングの組織浸透や業務効率化を担当しています。
「予算がない」「人が足りない」「MAツールを入れたけれど活用しきれない」「営業の協力が得られない」といった、理想通りにいかない実務の壁を数多く経験。今日も奮闘中です。