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なぜMAツールは放置されるのか。営業の心理的バイアスを外し、スモールステップで定着させる手順

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MAツールを導入したものの、社内で全く活用されずに放置されている。そんな悩みを抱えるマーケティング担当者は、実はかなり多いのではないかと思います。
どれだけ機能の便利さを力説しても、他部署の協力を得られず、マーケティング部門が獲得したリードが放置されてしまう・・・。
今回は、MAツールがただの高額なメール配信ツールになるリアルな原因と、営業チームを巻き込んで実務に落とし込むためのアプローチをお話しします。

こんな課題のヒントに!

  • 高いお金を払って導入したMAツールが、実質「ただのメルマガ配信ツール」になっていている。
  • 営業チームにリードを渡しても放置されてしまう。
  • 機能の便利さや他社のデータを営業に力説しても、他人事のように扱われて話が進まない。

なぜMAは「高額なメール配信ツール」になってしまうのか?

結論からいうと、多くのBtoB企業で、MAツールは本来の力を発揮できていません。

見込み顧客のスコアリングや、興味関心に合わせた自動追客といった機能は使われず、ただリストに向けて一斉にメールを送るだけのツールに成り下がっています。

これでは、高い初期費用や月額費用に見合う成果は出ません。なぜこの状態に陥るのか、現場で起きているリアルな問題を見ていきましょう。

見込み顧客の放置が招く、お金ばかりかかって成果が出ない悪循環

MAツールが上手く回らない最大の理由は、マーケティング部門が獲得したリード(見込み顧客)を、営業チームが対応しきれずに放置してしまうことにあります。

営業の方々は、今月の売上や契約数を追うことで手一杯です。そのため、まだ検討段階にある「今すぐ客ではないリード」へのアプローチはどうしても後回しになります。

マーケ側がお金をかけてリードを集めても、営業が動かなければ売上に繋がりません。結果として、経営層からは「MAツールを入れたのに、何の効果も出ていないじゃないか」と詰められる、苦しい状況になります。

インサイドセールス不在の組織がぶつかる、架電の心理的ハードル

特に専任のインサイドセールス(内勤営業)がいない組織では、この問題が深刻化します。

飛び込み営業や、既存顧客への提案をメインにしてきた営業担当者にとって、「資料をダウンロードしただけの人」に電話をするのは、心理的なハードルがとても高いのです。

電話をしても繋がらないことが多く、繋がっても冷たくあしらわれるかもしれない。そういった不安があるため、営業チームはマーケからのリスト進呈を、ありがたいどころか「余計な仕事が増えた」と捉えてしまいます。

営業がリードを放置するのは、やる気がないからではありません。日々のKPIの追及と、見ず知らずのリードへ電話をかける心理的負担が原因です。ここを理解せずに「ツールを触ってください」と正論を押し付けても、組織の溝は深まるばかりです。

営業にデータを提示しても、態度が変わらない本当の理由

なんとか営業に動いてもらおうと、マーケティング担当者はデータや成功事例を集めて説得を試みますよね。私も昔、同じことをやりました。しかし、これが驚くほど響かないのです。

一般論の成功事例や調査データは、なぜ現場に一蹴されるのか

「このツールを導入すれば、他社では案件化率が何パーセント上がりました」という他社のデータを見せても、営業責任者からは「うちの商材は特殊だから合わないよ」と一蹴されるのがオチです。

営業が知りたいのは、他社のキラキラした成功談ではなく、「自分たちの今の業務がどう楽になるのか」や「今月の数字にどう結びつくのか」だけ。自分たちに関係のない外部のデータをいくら並べても、当事者意識を持ってもらうことはできません。

目先の契約数を追う営業評価と、リード育成の時間軸のズレ

そもそも、マーケティングと営業では見ている時間軸が違います。

マーケティングは「半年後や1年後に顧客になるかもしれないリード」を育てようとしますが、営業は「今月、来月の数字」を作らなければ会社から評価されません。この評価基準のズレを無視して、中長期のリード育成の話をしても、お互いの会話は平行線をたどるだけです。

営業を味方につける「かなり手前の目標」の置き方

では、どうすれば営業チームを巻き込めるのでしょうか。私が実務の中で見つけた解決策は、目標をものすごく低く設定することでした。

いきなり「商談を作ろう」とするから失敗するのです。もっと手前の、誰でもできる目標からスタートします。

商談化率はいったん忘れ、まずは「通電率の可視化」を共通目標にする

最初から「アポ獲得数」や「商談化率」を追うのをやめましょう。まずは、「マーケが渡したリストに対して、どれくらい電話が繋がったか(通電率)」を測ることを最初の目標にします。

これなら、営業のトークスキルや商材の向き不向きに関係なく、電話をかけさえすれば数字が出ます。目標を「成果」ではなく「行動」に置くことで、営業の心理的な負担をグッと下げることができます。

営業に心理的な逃げ道を作り、アクションへのハードルを下げる

「アポが取れなくても全然構わない。まずはどんな反応だったかを知りたいので、電話をかけてみてほしい」と伝えることで、営業担当者に安心感が生まれます。

失敗しても自分の評価が下がらない、という逃げ道を作ってあげるのです。こうして少しずつ架電へのアレルギーをなくしていくスモールステップの設計が、MAツールの運用を軌道に乗せるための地味ですが確実な方法です。

施策を「自分ごと」化してもらう巻き込みの技術

営業チームが少しずつ動き出したら、次はマーケティングの施策自体に営業を巻き込んでいきます。マーケが作ったものを押し付けるのではなく、一緒に作る空気を作ることが大切です。

ヒアリング項目を共同で修正し、営業の戦術企画への参画を促す

リードに電話をかける際、どんな項目をヒアリングすれば営業活動がしやすくなるか。これを、マーケティング部門だけで決めるのではなく、営業チームと一緒に考えます。

「ヒアリング項目を作ってみたけれど、現場の感覚からして足りない部分や、修正したいところはないですか?」と意見を求めるのです。現場の意見を取り入れていくと、営業の方々は「これは自分たちも企画に参加して作った仕組みだ」と感じるようになります。こうなれば、もう協力者です。

マーケティング側での一方的な準備を捨て、現場の意見をシステムに反映する

マーケティング担当者は真面目な人が多く、完璧な資料や台本を自分たちだけで準備してしまいがちです。しかし、それでは営業から見ると「マーケが勝手に決めたルール」になってしまいます。

あえて未完成の状態で営業に相談し、泥臭く現場の意見を吸い上げながらMAのフォームや顧客管理の入力項目に反映させていく。このワンクッションがあるだけで、ツールの定着率は跳ね上がります。

まずは営業責任者への「ヒアリング」から始めてみる

記事の最後として、明日からできる具体的なアクションをお伝えします。MAツールが上手く動かないと悩んでいるなら、まずは営業責任者にお茶でも誘って、本音を聞きに行くことから始めてみてください。

成功体験の共有がもたらす、次の施策をスムーズに進める力

「マーケがリードを渡しても、なかなかアプローチが進まない原因って、現場の目線だとどこにありますか?」と、素直にアドバイスを求めに行くのです。決して営業を責めるのではなく、自分たちの仕組みのどこが営業活動の邪魔になっているのかを教えてもらうスタンスをとります。

そこで出た課題を、一つひとつMAの設定変更などで解決していく。営業から「マーケに相談したら、自分たちの仕事が少し楽になった」と思ってもらえれば、信頼関係が生まれます。その小さな信頼の積み重ねこそが、次の施策をスムーズに進める力になります。

この記事を書いた人[ABOUT

IT・デジタルマーケティング領域で20年以上の実務経験。現在は、デジタルマーケティングの組織浸透や業務効率化を担当しています。
「予算がない」「人が足りない」「MAツールを入れたけれど活用しきれない」「営業の協力が得られない」といった、理想通りにいかない実務の壁を数多く経験。今日も奮闘中です。