こんな方へ
マーケティング部門が「獲得リード数」だけをKPIに置いている限り、営業との溝は埋まりません。一方で、受注件数や売上目標を起点にしたKPIツリーを営業と共有すると、マーケティング活動が売上貢献にどう紐づくかが可視化されます。その結果、施策の優先順位がつきやすくなり、予算や人員を確保しやすくなります。
「KPIをどう設計するか」より先に、「誰と共有するか」が機能するかどうかの分岐点かもしれません。
BtoBの購買プロセスは変化しています。顧客が営業担当者に会う前に、情報収集の57%をすでに終えているという調査結果があります。つまり、マーケティングが関わる段階で、購買意欲の土台はかなりできています。
それでも「マーケは数字に貢献していない」と見られるのは、営業が受け取るまでのプロセスが可視化されていないからです。MQLの定義、架電数、アポイント数、商談化率——これらをKPIツリーに組み込んで営業と共有すると、「どこでボトルネックが起きているか」が双方で確認できるようになります。
営業からすれば、「どのリードに優先的に動くべきか」の判断材料になります。マーケからすれば、施策の効果が商談件数に紐づいて語れるようになります。
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KPIを営業と共有していない現場では、よくある構図があります。
目先の売上対応に追われる営業と、日々の業務に追われるマーケティング部門。どちらも忙しいですが、向いている方向がずれていることに、誰も気づいていない状態です。
実際に経験した場面を挙げると、売上が上がらない焦りから営業がセミナーの企画を始め、マーケ側がそのオペレーションに引っ張られていった、ということがありました。思い付きの施策に動員されると、デジタルマーケティングはなかなか前に進みません。KPIツリーで役割分担を先に決めておくと、こういったことは防ぎやすくなります。
もう一つよく見かけるのが、「リード」の定義のズレです。営業が言うリードは商談した企業のことで、マーケが言うリードはMQL・SQLを含む幅広い概念——そのままKPIの話をすると、数字の前提が違うので議論がかみ合いません。
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整理してみると、うまくいっているケースには共通点があります。以下の4点です。
リード・MQL・SQLといった用語を、営業と共有できる言葉に置き換えることから始まります。「問い合わせ件数」「架電した件数」「アポが取れた件数」など、営業現場でも意味が通る言葉に変換してKPIツリーを作ると、説明のたびに用語の解説をしなくて済みます。
カタカナやアルファベット3文字が多いマーケ用語は、他部門から距離を置かれがちです。言葉の選び方一つで、コミュニケーションの質が変わります。
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完璧なKPIツリーを作ろうとすると、なかなか動き出せません。現状把握できている数値から骨格を作り、「これで合っていますか」というスタンスで共有するほうが、議論が進みやすいです。
営業と一緒に見ると、平均案件単価や受注件数について「そういえばこのくらいかも」という会話が生まれます。マーケ側では把握しにくかった数値が、共有の場で出てくることもあります。
別々に共有するほうがよい場合もあります。営業責任者と現場担当者、マーケ部門でそれぞれ確認してから、合同で議論する、という順序も現場では機能します。
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KPIツリーだけ提示しても、「理屈はわかった」で終わることが多いです。資料ダウンロード数を増やすためにどんな施策が考えられるか、商談化率を上げるためにマーケがどう動くか——具体的なアクションをセットで書き出しておくと、自分事として捉えてもらいやすくなります。
営業部門とマーケ部門の役割分担が可視化されることで、「この施策はどちらが動くのか」という会話が減ります。
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KPIツリーは作って終わりではなく、定期的にレポートとして共有することで、理解が深まります。共有すると効果的なレポートの例を整理すると、こうなります。
| レポート種別 | 含む指標 |
|---|---|
| ベンチマークレポート | セッション数・ユーザー数・直帰率など。チャネル別・新規ユーザーのセグメントも含める |
| コンテンツパフォーマンス | リード獲得に貢献した記事・ホワイトペーパーのランキング。商談化リードが閲覧していたコンテンツも |
| 営業・マーケ連携状況 | MQL数・架電数・通電数・アポイント数・商談化数 |
ボトルネックがどこにあるかが可視化されると、「施策の優先順位を変えよう」「ここに予算を集中しよう」という判断が、マーケ単独ではなく組織として下せるようになります。
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営業とKPIを共有すると、変化するのは数字だけではありません。
まず、「マーケティングは何をやっているのかわからない」という認識が変わります。商談に至るまでのプロセスが数値で見えるようになると、マーケ活動への理解が増します。予算や人員の話がしやすくなります。
次に、営業からのフィードバックが増えます。「どの資料が商談で使えるか」「どのページを見た顧客が反応がよいか」——こうした情報が自然に入ってくるようになると、施策の精度が上がります。
継続的にレビューとデータの蓄積を重ねることで、KPIツリーは市場の変化に合わせて更新されていきます。最初から完璧でなくていい、というのはそういう意味です。
改めて整理するとこうなります。
KPIが機能していないと感じているなら、設計の精度より先に「共有できているか」を確認してみると、糸口が見えてくるかもしれません。