スタートアップでのデジタルマーケ部門立ち上げの実体験をもとに、戦略の整理から施策実行・営業連携・KPI設計の失敗まで、順を追ってまとめます。
こんな方におすすめです
初期メンバーは4名。中途採用で入社したばかりの未経験者が3名いたため、教育とサポートが業務の大きな割合を占めていました。
マーケティング部門の主な役割はリード獲得です。各メンバーのスキルセットをヒアリングし、担当を割り振るところからスタートしました。
立ち上げ当初のセールスチームはフィールドセールスのみで、既存事業と新規事業を兼務している状態でした。インサイドセールスはいなかったため、マーケが獲得したリードをその都度営業チームへ渡す形でスタート。ただ、この方法ではリード管理が煩雑になりやすく、早い段階から効率化が課題と感じていました。
コーポレートサイトと事業部サイトはすでに存在していましたが、ブログは半年ほど更新が止まっている状態。導入済みのMAツールもほぼ使われておらず、年に1〜2回のキャンペーン案内に使う程度でした。SFAとの連携も不十分で、本来の力を発揮できていない状況でした。
初期フェーズでは、経営層と一緒にリーンキャンバスを活用し、ターゲットと課題の仮説設定を行いました。リーンキャンバスは新規事業の検証や、立ち上げ初期の戦略整理に向いているフレームワークです。短時間で作成でき、ターゲット・課題・解決策・KPIを1枚に落とし込めます。このプロセスを経ることで、施策全体でブレないメッセージを打ち出しやすくなりました。
関連ガイド:BtoBマーケティング戦略設計
サイト全体の構造に大きな問題はなかったものの、ソリューションごとの基本情報が不足していたため、そこを補完。問い合わせフォームだけでなく、ホワイトペーパーダウンロード用のページも用意し、リード獲得につながる導線を強化しました。
トップページのメッセージも、リーンキャンバスで固めたターゲット・課題に合わせて調整しています。
導入済みのMAツールはほとんど使われていなかったため、まず利用頻度と目的を整理。基本機能の活用を定着させるか、別のツールへリプレイスするかを検討しました。最終的にはリプレイスを決断し、リストの整理・移行作業・メールテンプレートの再設計をひと通り行いました。
使える予算は必要最低限のツール費用だけ。広告費は都度申請・承認が必要な状況でした。
最初に思い浮かんだのはリスティング広告やSNS広告でしたが、それらは止めたら終わりのフロー型施策です。一人に近い体制でまわしていくためには、積み上がる施策に絞ることが重要だと判断しました。
BtoBとの相性が良く、情報を蓄積できるSEOとホワイトペーパーを軸に据えることにしました。
SEOを強化することを決めたものの、リソースも知見も限られていたため、まずSEOツールを導入。ツール導入費用は社内で承認が下りたため、SEOコンサルも併用することができました。
SEOコンサルのサポートのもと、自社にとって価値あるキーワードの洗い出し・競合調査・現状把握を実施。ライターへの指示書の作成方法もレクチャーいただき、ライターの紹介もしてもらいました。
1か月後には月1〜2本のペースで継続的に記事を公開できる体制へ。3か月後には既存記事のリライトも実施できていました。
SEO対策は中期的な集客施策のため、そのままではリード獲得にはつながりません。そこで、コンバージョンポイントとしてホワイトペーパーを用意しました。記事のテーマと連動する資料を自作し、記事末にダウンロード導線を設置。
短期的なリード獲得としては、成果報酬型の資料ダウンロードサイトへの掲載も活用し、「中期的にSEOで集客しつつ、短期的には外部経由でもリードを獲得する」仕組みをつくりました。
旧MAのデータを移行するにあたり、まずリストを整理。営業側が持っていた名刺データも一緒にデジタル化し、新MAにスムーズに取り込めるよう準備しました。
リストのインポート後、メールテンプレートも新たに作成。サンクスメールやホワイトペーパーダウンロード後の自動返信メールを整備し、フォームも問い合わせ用とホワイトペーパー用で別々に設置しました。
リードを獲得してから営業に渡すまでの流れを細かく設計しました。どの段階で誰が対応するかを明文化することで、営業チームとの連携強化が可能になりました。
ダウンロード後にコンテンツの更新情報などをメールで案内していましたが、なかなか問い合わせにはつながらない状況が続きました。
そこで改めて、インサイドセールスの仕組みが必要だと判断。営業部門と連携して、ダウンロード直後のフォロー架電を行う体制を提案しました。
最初はうまくいかず、なかなか理解を得られない時期もありました。粘り強く説明を続け、中途で入社された営業メンバーの後押しもあり、少しずつ成果が出るようになりました。最終的にはアポイント率が向上し、マーケ部門が「売上に貢献している」という認識を社内に根付かせることができたのが、大きな転機でした。
立ち上げ初期は施策を動かすことに集中するあまり、KPIをしっかり定義しないまま進めていました。その結果、施策の効果を正確に測りにくい状況が続きました。後々、KPI設計はもっと早くやるべきだったと痛感しています。
KPIが曖昧なままだと、施策の優先順位を判断する根拠が持てません。「何となく良さそう」で動き続けてしまい、営業への説明コストも高くなります。
やり直す際は、定期的にKPIを確認できるレポートを設計することから始めました。効果を数値で追いかけられるようにすることで、継続的な施策改善につなげやすくなりました。
施策を動かし始める前に、KGI・KPIを決めておくべきでした。数字の根拠がないと、施策の優先順位が感覚頼りになります。また、経営層や営業との会話でも、共通の数字がないと議論がかみ合いにくくなります。
獲得したリードをどう渡すか、誰がいつフォローするかを、最初に明文化しておくべきでした。ルールが曖昧なまま進めると、リードの優先度が下がりやすく、フォローが遅れて成約率向上を妨げる要因になります。
MAツールは高機能であるほど、使いこなすまでに時間がかかります。最初から複雑なシナリオを組もうとせず、「フォームが送信されたらメールを送る」というシンプルな自動化だけ動かし、そこから少しずつ拡張する進め方が現実的です。
BtoBマーケティング部門の立ち上げでは、施策の実行と並行して、KPI設計・営業との連携設計・MAの活用定着という3つの土台を早めに整えることが、後の成果に大きく影響します。
どれも「やればよかった」と後から気づくことばかりでした。施策を動かしながら並行して整備するのは大変ですが、後回しにするほど修正コストが上がります。
限られた予算とリソースの中でも、積み上がる施策を選び、営業との接続を丁寧に設計することで、マーケ部門の存在意義を社内に示すことはできます。